第107章

「ここに人を残して。ハエ一匹たりとも入れるな」葵は冷たく言い放った。

「了解だ。一小隊を残して警備させる」傍らにいた悠が応じる。

葵は身を翻し、大股で出口へと向かった。胃の奥が再び鈍く痛み始める。

大劇場の入り口まで来ると、猛吹雪が容赦なく顔に叩きつけられ、刺すような寒さが襲ってきた。

救急車がサイレンを鳴らし、雪景色の中を疾走していく。

葵は悠の車に乗り込んだ。隣に座る春は、あの黒い木箱をしっかりと抱え込んでいる。

車内は静まり返り、ワイパーがフロントガラスを擦る音だけが響いていた。

「葵、藤原さんは……助かるのかな?」春が不安げに尋ねる。

「あの男はしぶといから」葵は目を...

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